【初期設置編】NASでプライベートクラウドを簡単に構築する!

外部記憶メディアにカセットテープを利用していた昔から、パソコンユーザはバックアップに悩まされ続け、中には突然大切なデータ(ファイル)が飛んで地獄を見た人もいるだろう。
企業といった組織内ならネットワークやサーバ担当部署、または専門の担当者に任せておけば良いが、今やリモートワークが推奨され、家庭内でもパソコン以外にタブレットやスマホといったマルチデバイス状態であるから、それらのバックアップとファイル共有喫緊の課題な人は多いハズだ。
実は私もその一人で、今までは古いパソコンにCentOSをブチ込んでファイルサーバにし、外出先で参照する共有ファイルをGoogleドライブ等のクラウド上で管理していた。
ところが、蓄積しているファイル数と1ファイル当たりの容量が増大すると、とてもじゃないが維持管理コストが見合わなくなり、ディスク容量の拡大と冗長化に対応できなくなってしまった。
そこで、以前から考えていたNASによるプライベートクラウドの構築に取り組むことにしたので、本サイトで何回かに分けて詳細に解説したいと思う。

パブリッククラウドとプライベートクラウド

そもそも毎月の利用料金が支払えるのなら、Google・Apple・Amazon・マイクロソフト等が提供しているパブリッククラウドを利用すれば話が早いし、何もわざわざ自前でプライベートクラウドを構築する必要はない。特に業務でクラウドを利用する法人なら尚更だ。
それに、個人であっても利用するディスク容量によっては、GoogleやAppleが提供しているパブリッククラウドサービスの方が割安かも知れない。

ディスク容量Google OneApple iCloud+
50GB130円(税込)
100GB250円
200GB380円400円(税込)
2TB1,300円1,300円(税込)
5TB3,250円
10TB6,500円
20TB13,000円
30TB19,500円

上記はGoogle One(1ユーザ・月額利用料金・税別)とApple iCloud+(5ユーザまで・月額利用料金・税込)で、周知の通りスマホで言えばAndroidユーザなら15GBまで、iPhoneユーザなら5GBまでそれぞれのクラウド上のディスクが無料で使えるが、無料枠で足りないから問題なのだ。
国内企業でもパブリッククラウドをサービスしている会社はあるが、主に法人向けなのと、1TBを超えるディスク容量の場合は、月額2,000円以上の場合が多い。
そこで、以前より目を付けていたQNAP(キューナップ)のNAS(ナス:Network Attached Storage)で金額を比較してみよう。

上記のNASSeagate(シーゲイト)のNAS用HDD(2TB)1台(冗長性なし)の構成で考える。

Seagate IronWolf 3.5

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執筆時点のAmazon価格では、QNAP TS-231KNAS本体)25,800円Seagate IronWolf 3.5インチ 2TB(HDD)7,505円33,305円(税・送料込)だ。
例えば月額払いでGoogle Oneを2TBで2年使った場合(1,300円✕12ヶ月✕2年+消費税)で34,320円Apple iCloud+の場合(1,300円✕12ヶ月✕2年)でも31,200円かかる計算となる。
単純に比較するのはいささか乱暴ではあるが、GoogleやAppleのパブリッククラウドを2年以上使うのであれば、自前でNASとHDDを用意してプライベートクラウドを構築・運用した方が安上がりだ、ということになる。
無論、別の安いNAS製品にしたり、もっと大きい容量のHDDを2台買ってRAID(レイド:Redundant Array of Independent Disk)を組む等、いくらでも自由に組み合わせて自分用のプライベートクラウドを構築することが出来る。
また、運用していてディスク容量が足りなくなった場合や、より強固なバックアップ体制にするための冗長性といった拡張等が、柔軟かつ低コストで対応可能である。
私は今回、QNAP TS-231KSeagate IronWolf 3.5インチ 4TBを1台購入することにした。

Seagate IronWolf 3.5

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19,191円(03/28 17:58時点)
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私一人が使うので、容量的に4TBあれば良いと考えたのもあるが、Seagate IronWolfの1~3TBモデルまではIHMIronwolf Health Management:IronWolf用診断機能)が非対応な上に、RVRotational Vibration:回転振動)センサが搭載されておらず、これらは4TB以上のモデルから対応・搭載となっているからだ。
それに、いきなり同容量のHDDを2台買うより予算がCITIZEN PROMASTERを買ったから金欠、まずは4TB 1台で試し、後でもう1台買って4TBを丸ごとバックアップ用にしようと考えている。この場合、物理的なバックアップディスクが同一NAS内で運用できるため、省スペースかつ冗長性もバッチリとなる(気が変わってRAID構成にするカモ知れないが)。
なお、HDDに関して「PC用とNAS用で何が違うの?」と疑問に思う人は、次の記事を読んでみると良いだろう。同じディスク容量ならPC用の方がNAS用より安いが、NAS用が高いのには理由があるのだ。

それとNASQNAP TS-231Kを選んだ理由だが、QNAP製品は性能・安定性・独自性が高く、エンタープライズ用に使われるほど信頼性も高い。
NAS製品だと日本での知名度は圧倒的にSynology(シノロジー)の方が上だし、ネットでもSynology製品を使った記事の方が多いと思うが、この価格帯でスナップショット機能があるQNAP TS-231Kが良いと判断した。
当然ながら同価格帯のSynology製品で出来ることはQNAP製品でも実現可能だし、IronWolfのIHMもちゃんとサポートしている(ファームウェア4.3.5からサポートしているようだ)。
それでも「知名度があってユーザが多い製品が良い」という人は、価格的にSynology DS220j/JPが良いかも知れない。

本サイトではQNAP TS-231Kでプライベートクラウドを構築して運用する方法を解説するので、Synology DS220j/JPについて解説している他のサイト記事と比較してみると良いだろう。

NASにHDDをブチ込む!

国内メーカーのNAS製品の場合、最初からHDDが本体に組み込まれてRAID構成になっている製品が多く、買ってきて電源コードとLANケーブルをルーターやハブに接続するだけで設置が完了してしまう。
ゆえに、パソコン全般にそれほど詳しくない人や、高度な設定が不要な人はそういったNAS製品を使えば良いと思うが、QNAPSynologyといった海外メーカーのNAS製品の場合は、そもそもHDDといったディスクが別売りだ(「NASキット」とも呼ばれる)。
だからと言うワケではないだろうが、本体にHDD(もしくはSSD)をセットする説明書すら製品には一切入ってないので、本稿では本体にHDDをセットするところから解説する。

画像のように、2基あるHDDトレイの左側トレイのレバーを引き上げる

次に、画像のようにHDDトレイを引いて取り出す。

HDDトレイをNAS本体から取り出したまま縦方向に見ると、画像のように上下方向に1つづつHDD固定ツールが嵌っている状態だ。
画像で示しているように、画像向かって右端の部分を引っ張ってHDD固定ツールを外しておこう。

画像のようにHDDトレイにHDDをセットする。
先ほどHDD固定ツールを外したと思うが、HDDとHDD固定ツールの穴にHDDを合わせ、HDD固定ツールを嵌めて固定する。

画像のようにHDDトレイをひっくり返すと、裏側にHDDを固定するビス穴がある。
3.5インチHDDの場合は、画像のように赤丸3箇所を製品付属のビスで固定すればOKだ。
ちなみに2.5インチHDDやSSDの場合は、上述のHDD固定ツールでディスクを固定出来ないため、裏側からビスで固定してやるしかない。

画像のようにHDDトレイをNAS本体に押し込みつつ、最後にHDDトレイのレバーを押し下げて本体にセットする。

子供や他人、それにネコがイタズラしてNAS本体からHDDを抜き出せないように、製品付属の鍵でセットしたHDDトレイをロックする。
画像のように鍵を鍵穴に差し込み、反時計回りに90°回転させるとHDDトレイが本体にロックされ、ディスクがロック状態となる。
HDDトレイのレバーを引き上げると、NASの電源が入っていて稼働中であってもHDDが簡単に抜けてしまうため、事故を未然に防ぐためにも、ちゃんとロックしておく方が賢明だ。
ただし、ロックした後で鍵をなくすと二度とHDDトレイを出すことが出来なくなるので、鍵はなくさないように保管しておこう。

NASを設置する

NAS本体にHDDのセットとロックが完了したら、NASを設置する。
設置と言っても、製品付属の電源コードとLANケーブルをルーター(もしくはハブ)に接続し、本体の電源を入れれば良いだけだ。

画像は私の場合の設置例だが、リビングのテレビラックにWiFiルーターを置いているため、テレビラックをちょっと片付けてNASを設置してみた。
NASの設定はボリュームがあるので稿を改めて別途解説するが、リビングに設置しても気になるような騒音は皆無だし、「RAIDにしてないし、家庭内でもネットワーク越しのHDDは遅いかな?」と思っていたが、全然そんなこともなく、非常に快適に使えている。
ただ、黒色家電の中で浮く配色だよな、とは思っている。

おわりに

確か1993年頃だったと思うが、当時パソコン通信でSigOp(シグオペ:「シグ」と呼ばれる会議室の管理者)をしていた草の根BBSの関係で、ニフティ386BSD(98)のフロッピー閲覧に参加させてもらったことがあった。386BSD(98)をワケも分からず5インチフロッピーで50枚近くコピーしたものの、ついに386BSD(98)のインストールに成功しなかった。
それからほどなくしてFreeBSDLinuxブームが巻き起こり、当時使っていた68系マックにもNetBSDが公開され、そのしばらく後にWindows95の発売もあって、思い返すと「インターネット黎明期だったなぁ」と思う。
当時のパソコンではLANと言っても、ファイルサーバにノベルNetWareを導入していれば、まだマシな方だった。WindowsNTが登場するまでは、WindowsはOSとして安定性を欠き、サーバ機能もなかったからだ。
・・・今思えば、誰も開発したことがない業務パッケージシステムをWindows3.1Windows95で開発し、大検と大学入試を突破して仕事をしながら大学で勉強しつつ、さらに大学公認サークルのWebサイトを立ち上げて運営したりと、よくまぁやったものだ
それまでFreeBSD(98)でコテコテのBSD派だった私も、大学を卒業した頃はLinuxが席巻しており、しばらくしたらSolarisが無償公開され、開発・販売元のサン・マイクロシステムズはその後オラクルに買収され・・・気が付いたらCentOSRed HatLinux)ラブになっていた。
その後、仕事で業務パッケージシステムをクラウド展開していた頃は、個人的にWindowsServer2016を買ったし、自宅に導入しようとしていたぐらいだったが、結局はサーバ機を買って設定する経済的・時間的余裕がなくて諦めてしまった。
そうこう考えると、自作パソコンブームや自宅サーバブームは、今となっては「何だったんだろう?」と不思議な思いがする。
今や、こんな小さなNASが自宅サーバの代わりとして稼働するようになり、しかもプライベートクラウドとして構築し、運用が可能になってしまっているのだから。それに今はパーソナルユースで言えば、パソコンよりスマホ利用者の方が圧倒的に多いし、スマホで足りない部分はタブレットで十分カバー可能だ。
それに、開発環境(プログラミング環境)がクラウドに完全移行するのは、時流的に必然になりそうだ。すでにスマホがそうなりつつあるが、5Gネットワークが当たり前になるのも、もうすぐだろう。
量子力学がワカラン私は量子コンピュータの原理が理解不能な時点で終わっているため、未来予測なんかは到底出来ないが、そう遠くない将来、恐らく世界的に知性と経済の格差が天と地ほど開き、キャッチアップが不可能になるに違いない。
富裕層と貧困層が固定化される世界。つまり、コンピュータが使える層と、コンピュータに使われる層とに分かれる世界・・・私は人生の大半をITのプロとして過ごして来たが、自裁する未来しか見えないな。

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