SEって何だ?

平成30年。来年5月には今上天皇が御譲位されるに伴って新しい元号が制定され、新たなる日本の歴史の1ページが開くだろう。
・・・元号が変更!?やべぇ!西暦・和暦変換ロジック修正だよぉ!!
なんてな。(´ー`)y-~~

老兵は去らず・・・

平成元年2月13日。池袋北口から徒歩5分程度の雑居ビルの2階。
その前の週に県立高校を2年次で中退した私は、アルバイトでもする気楽さで分厚いフロム・エー誌からソフトハウスを探し、面接して呆気なく正社員雇用を申し渡された、その最初の出社日だった。
私は前日に17歳になったばっかりだった。その前の週にはやや長めのガクランに太めのズボンを穿いていた高校生だったのだ。亡父のYシャツにネクタイを締め、背広に革靴で身を固めてはいたが、父にとってそうだったように、私にとっても一張羅の背広だった。父はわゆる「サラリーマン」ではなかった。確かに会社員ではあったが、ホワイトカラーではなかったのだ。
私もまた、会社員としてサラリーマン人生を歩むかのように思えたが、当時を思い出してもサラリーマンというよりは「職人」だったと思う。ともあれ、あれからもう30年が経とうとしており、私は当時と同じくSEとして仕事をしている。

・・・君は専門学校か大学の学生だろうか?それともIT企業でまだ2~3年目ぐらいの若者だろうか?私はね、今でも現場で設計もするし、コードも書くエンジニアだよ。そんな「老兵」である私から、この拙いブログで君たちにアドバイスが出来れば嬉しく思う。

SEというマジックワード

テメーで「SEの良心」なんて名前のブログやってて何言ってやがる?(#・∀・)
と思われるかも知れないが、SE=システムエンジニアは和製英語であって日本でしか通用しないので、特に英米人と英語で話すときは注意が必要だ。

英米人「What is your job?」(オマイ、仕事なにしとるん?)
日本人「My job is System Engineer.」(ワイ、SEや)
英米人「Huh?」(はぁ?)

と、アングロサクソン的なオーバーなジェスチャーで「何言ってるんだ、この東洋人は!?」ってなことになるので要注意。分かり易く極端に言えば「私はガソリンスタンドでシュークリームが食べたい」と日本語でも「?」なことを、例えば英語しか通じないアメリカ人に英語で言うぐらいスゴイ変な話になってしまう。

もっとハッキリ厳密に言うと、今の日本でSEという職業はない!
無論、コンピュータを発明したIT先進国であるアメリカにも、そんな職業はない!!

じゃぁ、SEって何だよ?
知るかボケッ!説明してやるから読めや!!ヽ(`Д´)ノ

日本的経営とエンジニア

詳しくは大学の商学部か経営学部で日本的経営を詳しく勉強して欲しいところなのだが、そーはイカのキン○マだろうから、簡単に(笑)。
日本における工業と資本主義の関係は、

家内制手工業 ⇒ 問屋制家内工業 ⇒ 工場制手工業 ⇒ 産業革命

と辿り、産業革命以降は手工業が機械に置換されるべく国家や資本家によって資本が投下され、ザックリ言うと工業が重工業化されていった。工場が郊外へ建設され、その工場に通うために鉄道が敷設され、時間通りに鉄道を運用するために機械時計が発達し、鉄道を使う労働者に時計が普及して・・・と、いわゆるシチズン(市民)が形成されて行ったワケだ。幕末から明治にかけて日本はこの道を辿り、昭和初期には終身雇用・年功序列制度を作って、それまで親方・子方の徒弟制度の職人 の熟練工を自社に囲って定着させ、さらに産業と共に経済発展をすることに成功したのである。

戦後はGHQにより財閥解体・農地解放・労働組合結成の推奨等、日本はそれこそ価値観の大逆転にさらされるが、戦前からある日本的経営の要点である「家族主義」の主軸がズレることはなかった。無論、春闘血のメーデー事件もあったが、戦後の高度経済成長はそんなことをモノともせず、メイド・イン・ジャパンは世界に冠たる高品質製品のブランドになった。
非常に簡単に言えば、日本的経営に全く問題がないワケではなかったが、エンジニア(技術者)を大切にした(すぐゼニカネで判断せずエンジニアにやらせたいようにやらせてくれた)時代が長くあったのである。

バブル景気の崩壊とエンジニアリング

私は冒頭に述べた通りバブル景気に湧く時代に、リゲインのCMではないが文字通り24時間働いた。これは嘘でも誇張でも何でもなく、月の時間外労働が150時間超とかが普通だったのである。
超売り手市場でどこも深刻な人手不足であり、大卒の青田買いなんてのは当たり前で、新卒予定者を豪華客船で旅行に連れて行ったり、自社保有のフェラーリのレンタルまでして大卒の新卒者を囲うのに、どこの企業も狂奔していた。人の事は言えないが、私の世代で高校を中退する高校生が年に1万人を突破したし、どこのアルバイトでも高時給でウェルカムなのはモチロン、高卒でも就職先はいくらでもあった。当時のことはいくらでも書けるが、とにかく狂った時代だった。

だから、その反動は酷いものだった。
今さらそれをあげつらって「失われた20年」などと簡単に言おうとは思わない。
ひとつ言えるとしたら、アメリカ発のグローバリゼーションによる日本的経営破壊分断である。端的に言えば、労働市場の流動化技術継承の破壊だ。
分かり易く言おう。企業は人材を自ら数年~数十年かけて育てるコストを放棄した。中途で有能な人材を適切(?)な金額で中途採用した方が間尺に合うのだ。これは日本を代表するような大企業より、それよりは小規模(それでも大企業も含まれるが)が愛用したのである。
要するに、人材育成の時間とコストをケチッて、即戦力が欲しいのだ。即戦力(=売上なり利益なりを上げる)人材が最高であり、それ以下は極端に言えば(゚⊿゚)シラネーぐらいの社会になってしまった。そりゃ中途採用で力のある人材を採れば育成するコストは省けるし、手っ取り早く利益になる。だが、不景気になってそれを大学なり高校専門学校なりの新卒に求めるのは無理な話で、よほど優秀な学生以外は非正規労働という、イビツな社会を20年以上にもわたって作ってしまったのだよ。
そして人材育成と組織の新陳代謝の観点を失った会社はどんどんエンジニア属人化してしまい、特にソフトウェアのIT業界ではそれがむしろ推奨されたのだ。

客のキン○マを握れ!

自社のITシステムの開発を子会社化し、外出しにしていったのは80年代半ばからのトレンドだったと思う。当時は大型汎用機全盛だったので、それでも十分商売にはなったと思うが。
汎用機に関しては色々とあるのだが、本筋から逸れるので省く。
私がWindows3.1の頃に客先に常駐したとき、盛んに言われたのが「客のキンタ○を握れ!」だった。別にこれはWindows3.1に特化したことではモチロンないのだが、客先で相手の弱み(キ○タマ)を握ればコチラのモノだ!という、単純な属人化の話である。
「私がいなければ仕事(業務)が回らない」「システム化が進まない」といった類いのモノで、短期的にフリーランスの個人が取る戦略ならまだしも有効だが、それを会社組織の企業がやるって、どんだけバカなん?がしかし、今でもそんなバカ会社が多いのも事実なのだ。
考えてみて欲しい、弱みを握られた相手と将来的に経済発展するような仕事が出来ますか?(´・ω・`)
まぁ、属人化してしまうような業務はその企業のメインストリームとは余り関係なかったりするので、そんな仕事に血道を上げるのはアホとしか言いようがないのだがね。

いずれにせよ、人材育成と組織の新陳代謝が行われない(事実、新卒採用をかなり絞った企業は多かったし、新卒採用そのものを見送った企業も多かった)のでは、社内で新しい製品やサービスを開発して売り込もうというような機運が生まれるワケがない。不景気で消費も伸びないので、経済は成長出来ず次第にデフレによる負のスパイラルへと向かって行った
個人的には、90年代末に日産が倒産寸前まで追い込まれ、仏ルノーと資本提携してカルロス・ゴーン氏がCEOとして再建を託されたのが象徴的だった。日本の基幹産業である自動車において、このザマだったのである。

ウォーターフォールモデルの功罪

私が若い頃は、ソフトウェアによるコンピュータシステムの構築はしばしば建築に例えられ、設計が重要であると叩き込まれたものである。建築に例えるのは「作ったモノは手戻りが出来ない」ことを暗に示唆しており、ウォーターフォールモデルでの開発ではそれが当たり前なのである。
大型汎用機全盛の時代では、ある意味これは当然だし理に適っていて、フェーズごとにエンジニアの職務を区切ってプロジェクト(金額面も含めて)を管理することが可能だった。
この「エンジニアの職務」というヤツがクセモノで、アメリカの労働市場は職務で区切られているからとてもマッチしたが、日本の労働市場はそうではない。では何が起きたかというと、これまた日本企業にマッチしたヒエラルキーに置き換えられた。すなわち、

プログラマシステムエンジニアプロジェクトリーダプロジェクトマネージャ
平社員   ⇒ 主任・係長級    ⇒ 課長代理・課長級  ⇒ 次長・部長級

である(上記はあくまでも例えではあるが)。
確かに規模が大きいシステム開発では、未だにウォーターフォールモデルに置き換わる開発技法は存在せず、上流工程を担うのは経験豊富なベテランのエンジニアでなければ無理な局面が多い。そして詳細設計以降の下流工程は、上流工程ほどの知識やスキルがなくてもこなせるので(と、誰もが誤解しているが)中堅以下のエンジニアが担うケースが多かった。それはそれで、棲み分けが出来ていたのである。
日本的経営が機能しているのであれば、システム開発は若手からベテランまで超長期雇用を前提に育てつつ、徐々に出世させれば良かったのであるが、バブル景気の崩壊による景気後退にアメリカ発のグローバリゼーションにさらされた結果、会社組織は分社化を加速させ、アウトソース化(外注化)されていった。
結果として、中小零細のIT企業が山ほど量産され、SI(システムインテグレーション)の名の下、多重派遣によるエンジニアの搾取と劣悪な労働環境が問題化されたのである。そして、いつの間にか上流工程が偉く、下流工程は誰にでも出来る(だから外注する)という間違った風潮が根付いてしまった

サラリーマンとSE

サラリーマンSEもどちらも和製英語だが、その背景に日本的経営があって成立している言葉であり、職業である(厳密に言えば、サラリーマンという職業もSEという職業も存在しないが)。日本的経営は全滅していないものの、すでに崩壊しているので、サラリーマンSEなんていう日本的曖昧な職業人種も、遅かれ早かれ絶滅するだろうと私は考えている。
そもそも「サラリーマンSEは勤まらない」が私の持論だ。
その持論を長々と開陳するのはまた別の機会にするが、要点を述べると、ソフトウェアの開発は誰にでも出来る仕事ではないし、控えめに言ってもエンジニアは「職人」である必要がある。それも困ったことに、SEは十年一日の如く同じ作業の繰り返しから円熟する「職人」ではなく、どちらかと言えば芸術家等の「クリエイター」に属する仕事であると言える。似たようなシステムの開発はあり得るが、全く同じシステムの開発を別会社向けに新規で開発するなんてことは、まずない。そういった意味で、SEが作り出すシステムは同じものがなく、常に新しいものを開発していると言えるのである。

私は、SEとは漫画家のようだと考えている。
漫画家は絵が上手くないと勤まらないが、自由に絵が描けるようになるまで、人によって違いはあるだろうが、どれだけの期間練習するだろうか?しかも自分のオリジナルのストーリーを創作し、絵のキャラクターを自在に駆使して描かなければならない。そして重要なのが、創作したマンガが売れなければ、漫画家として生活することは出来ない。
私はそもそもプログラミングが出来ないSESEではないと思っているが、自由にコードが書けるようになるまで、私は10年近く独自にプログラミングの修行をして身に付けた。実際に上述のようにプロになったのはPC歴8年目のことだったので、最初の1年目に相当苦労したのは、言うまでもない。
今ではコンピュータ・システムはかなり広範囲に使われており、コンピュータ無しではもはや生活は出来ないのだが、従来の業務をデジタルトランスフォーメーションして新たなビジネスを生み出すためには、SEの専門的技術と独創性は今後も重要になるだろう。そのとき、朝定時に出勤して昼はランチを食べ、夕方から夜にかけて定時で帰るか2~3時間残業する、月曜から金曜まで決まった時間にしか仕事をしないサラリーマン根性SEに、そんな仕事は出来ないと考える。そんなサラリーマンのような漫画家の存在は、私は聞いたことがない。

SEの定義について

SEの「S」は何を指すのか?という問題がある。
システム開発は多岐にわたるので一概には言えないが、プログラマSEとステップアップした場合に、担当する技術領域または職務領域によって異なるのが実情だ。これは所属する組織(普通はIT企業)によって異なる。

1.Senior Engineer

シニアプログラマ(経験豊富なプログラマ)として開発チームを統率する。
シニアプログラマとしてのSEは、実際にプログラマと共にソースコードを記述し、開発実務に携わる。

2.System(Software) Engineer

設計者として仕様書や設計書を作成するが、1.との兼任も多い。
設計をする上でクライアントの要件を取りまとめてシステムの機能要件を決定したり、要件を元に各種仕様を決定(仕様書の作成)や、設計書の作成を行う。
一般的に言われるSEはこのエンジニアを指す事が多く、ソフトウェアエンジニアとも呼ばれたりする。

3.Sales Engineer

技術営業で、プロジェクトマネージャ(PM)やITコンサルタントを指し、2.を兼ねることもある。
エンジニアと名は付くだろうが、一番怪しいのがこの人達で、現場仕事が出来なくなったロートルSE技術営業(この技術営業ってのも怪しいが)に転身し、商流が深い案件と若手エンジニアを転がして「人身売買」で売上を上げるような人から、文字通り技術営業して仕事を取ってきてPMとして自社で回すような人まで、千差万別だ。
企業規模が大きいと、社内営業で終始するセールスエンジニアもいる。もはやエンジニアでも何でもないが、中堅以上の規模の会社ではこういった中間管理職を見かけることがある。
コンサルタントという人種はどの業界でも怪しいが、IT業界においてもそうなので、ハッキリ言ってどうでもいい。

おわりに

ITが分からない人にはサッパリ意味が分からない内容だったかも知れないが、SEについて何となく説明が出来ただろうか??
この記事を書くのにここ30年をザックリ振り返ってみたが、時代は随分と変化し、SEの意味解釈の変遷や適用業務の拡大に驚くばかりである。今も昔もSEって何してる人なの?」という疑問に明確に答えられない事実に改めて驚くが、今の時代は専門職的なプログラマSEというよりも「ITエンジニア」なのだろうな、とも思う。
言葉が持つ意味やその内容は、時代と地域によって変化する。問題なのは言葉そのものの意味や定義ではなく、自分が従事する仕事に誇りと自信と責任が持てるか?ではないか、と私は考えている。その意味においても、私はSEを名乗っている。


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