かわぐちかいじ原作『空母いぶき』の映画化で、同作品が連載されている『ビッグコミック』でのインタビュー記事の佐藤浩市氏の発言がいわゆる「保守界隈」から非難され、Twitterで炎上した。
私は『空母いぶき』の原作を読んでいないし、『ビッグコミック』のインタビュー記事も読んでいなかったので静観していたが、件(くだん)の佐藤浩市氏のインタビュー内容を掲載し、昨今の「炎上」について考えてみたい。
『空母いぶき』佐藤浩市インタビュー全文
--総理大臣役は初めてですね。
佐藤 最初は絶対やりたくないと思いました(笑)。いわゆる体制側の立場を演じることに対する抵抗感が、まだ僕らの世代の役者には残ってるんですね。でも、監督やプロデューサーと「僕がやるんだったらこの垂水総理大臣をどういうふうにアレンジできるか」という話し合いをしながら引き受けました。そしてこの映画での少し優柔不断な、どこかクジ運の悪さみたいなものを感じながらも最終的にはこの国の形を考える総理、自分にとっても国にとっても民にとっても、何が正解なのかを彼の中で導き出せるような総理にしたいと思ったんです。
--総理は漢方ドリンクの入った水筒を持ち歩いていますね。
佐藤 彼はストレスに弱くて、すぐにお腹を下してしまうっていう設定にしてもらったんです。だからトイレのシーンでは個室から出てきます。
--劇中では名実ともに「総理」になっていく過程が描かれます。
佐藤 これはある政治家の人から聞いたのですが、どんな人でも総理になると決まった瞬間に人が変わるっていうんです。それぐらい背負っていくものに対する責任を感じる、人間というのはそういうものなんですね。
--この映画からどのようなものを受け取ってもらいたいですか。
佐藤 僕はいつも言うんだけど、日本は常に「戦後」でなければいけないんです。戦争を起こしたという間違いは取り返しがつかない、だけど戦後であることは絶対に守っていかなきゃいけない。それに近いニュアンスのことを劇中でも言わせてもらっていますが、そういうことだと僕は思うんです。専守防衛とは一体どういうものなのか、日本という島国が、これから先も明確な意思を提示しながらどうやって生きていかなきゃいけないのかを、ひとりひとりに考えていただきたいなと思います。
出展:『ビッグコミック』2019年5月10日号
炎上したポイントとは?
私は冒頭に述べたように『空母いぶき』の原作を読んでいないから、当然原作のファンではない。かわぐちかいじ先生の作品は『モーニング』に連載されていた『沈黙の艦隊』を楽しみに読んでいたし、こういった複雑かつ重厚なストーリーの「ミリタリー物」が非常に得意なのだという印象を持っている。だから熱心なファンが多いのだろう。
その前提で上述のインタビューを読むと、個人的に「佐藤浩市は左派か?」とは思うが、炎上するほどの騒ぎになるのは甚だ疑問だ。
実際にTwitterで炎上した内容をまとめると、およそ次の点に集約されると思う。
これについて保守層にも影響力を持つインフルエンサー、作家の百田尚樹(@hyakutanaoki)氏のツイートを引用してみよう。
三流役者が、えらそうに!!
何がぼくらの世代では、だ。
人殺しの役も、変態の役も、見事に演じるのが役者だろうが! https://t.co/UReRTd6KNe— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) May 12, 2019
「空母いぶき」の原作は素晴らしい!
しかし映画化では、中国軍が謎の国に変えられているらしい。それだけでも不快だったのに、「下痢する弱い首相にしてくれ」という一役者の要求に、脚本をそう変えたと聞いて、もう絶対に観ないときめた。— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) May 12, 2019
私は自分の作品の映画化に関して、キャスティングに口出ししたことは一度もない。
しかし、もし今後、私の小説が映画化されることがあれば、佐藤浩市だけはNGを出させてもらう。 https://t.co/bKAJf7dYgC— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) May 12, 2019
ネットは付和雷同するところではない
常々思っていることだが、「それ、ちゃんと文章読みました?」と聞きたくなることが多い。私は仕事で設計書等の各種ドキュメントを書くのだが、実に誤読・曲解されることが多い。日本語で書いた文章をプログラムに落とし込むのは、そもそも大間違いなのかも知れないが。
FacebookやTwitter等のSNSは、個人が好き勝手に「モノが言える」(書ける)のであって、誰もが情報発信することが可能だ。それゆえに、多くの誤解や誤読・曲解をされる。Twitterは140字以内の文字制限があるから、特にその傾向が強い。ツイートがバズることがある反面、炎上することも多い。
上述した百田尚樹(@hyakutanaoki)氏のようなインフルエンサーが佐藤浩市氏のインタビュー記事を批判すると、それに乗っかって付和雷同する人が非常に多く見られた。それは「あの人が言っているなら間違いないだろう」という、非常に無責任極まりない態度だと言わねばならない。
かわぐちかいじ先生は商業誌で活躍するマンガ家で、その作品に何らかの思想的・政治的メッセージを含めても何ら不思議ではない。それを含んでの「作品」であり、支持を受けているからメシが食えているのだろう。佐藤浩市氏が左派だろうが何だろうが、同様のことが言える。同氏を見たくない人は同氏が出演する舞台・テレビ・映画等を観なければ良いだけの話だ。それに同氏が何を言おうが自由だし、それを直接批判するならまだしも、インフルエンサーに付和雷同して叩くのは話にならない。
上述したように、個人が好き勝手に言うのも、付和雷同するのも、その人個人の自由であり、それが問題だとは言っていない。重ねて言うが、インフルエンサーに付和雷同して誰かを叩くのは話にならないと言いたいのだ。
それに原作のマンガを実写映画化する際は、原作と映画ではまた別の作品になる。マンガの世界をそのまま現実に実現出来るほど、現実は甘くない。少なからず設定を変える必要はあるだろうし、演じる役者も生身の人間で、「自分が演じるにはどうしたら良いか」を考えるだろう。
映画「空母いぶき」を観るのも観ないのも個人の自由だし、観てから判断するのも遅くないとは思う。
さらに私が言いたいことは、まず相手の文章を良く読んで自分なりに理解するのは当然として、自分の言葉で発信しないで、何の甲斐があるのだろうか?ということだ。
これは先日の丸山穂高(@maruyamahodaka)議員の発言問題にも言えることではある。
おわりに
私は個人的に百田尚樹(@hyakutanaoki)氏の著作は評価するが、Twitterは評価していない。だからと言って、同氏のツイートを取り上げて同氏を批判しようとする意図はまったくない。保守層にも影響力を持つインフルエンサーで、特に佐藤浩市氏を批判したツイートをしていたから取り上げたに過ぎない。
ちなみに私の友人・知人の『空母いぶき』評は非常に高評価で、映画の予告編を観るだけでも、大変に面白そうなのが分かる。
「佐藤浩市は左派か?」と思っていた矢先、Share News Japanの記事に「佐藤浩市さん、しんぶん赤旗の日曜版に出ていたことが判明 → なお、父親の三國連太郎さんも…」とある。
マヂか!?Σ(°Д°) と思い、赤旗のバックナンバーをウェブで見たら、本当にそうだった。
一応、参照にURLを載せておく。しかし、本当に真っ赤なんだなぁ。(;´Д`)
参照
- 「佐藤浩市さん、しんぶん赤旗の日曜版に出ていたことが判明 → なお、父親の三國連太郎さんも…」(Share News Japan・2019年05月15日)
- 日曜版「しんぶん赤旗」(日本共産党・しんぶん赤旗・2016年05月08日号)
- 日曜版「しんぶん赤旗」(日本共産党・しんぶん赤旗・2013年03月03日号)
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