うつ病克服SEの処方箋

思えば、私は30歳前後でうつ病になった。それから丸10年は、半キチガイのような生活を強いられた。離婚もしたし、親しい友人もかなり失った。今は不眠症で飲んでいる睡眠導入剤以外の薬は全く服用していない。今は何とか、うつ病を克服したと言えるだろう。
これは、うつ病で苦しんでいるあなたへ(または親しい人がうつ病で苦しんでいる人へ)の長い手紙である。

うつ病は命に関わる病気である

私は医者ではないので、うつ病の定義やその症状については述べないが、もし自分にうつ病の疑いがあるのなら、ネットで調べるなり専門の病院にかかるなりして欲しい。
そしてもし、医師から「抑鬱(よくうつ)状態ですね」という診断(それに類するものでもいい)が下ったのなら、程度や症状の差こそあれ、それは間違いなく「うつ病」なので、心して聞いて欲しい。

うつ病と仕事と酒は、自分を殺す

まず、あなたが死なないようにしなければならない。何故なら、あなたが死んだら、全てが終わるからである。
なお、ここでは精神病に関することを主に「うつ病」と表現する。それ以外に表現しない場合は精神病全体を指すものと考えて欲しい。

うつ病は数年~数十年で治す病気

一般的に、病気は発病が早ければ治療も短期間で済む傾向にあるが、長期間かかって発病した病気の治療は長期間かかる傾向がある
うつ病も同様で、パワハラ上司が異動してきて追い詰められてうつ病になったものの、そのパワハラ上司がまた異動でいなくなったら、うつ病がなくなることもあるだろう。そんな事は稀なので、それで済むならそれでいいし、これ以上のことはない。
普通は自分の性格や生活環境等が複雑に入り組んで、ちょっとずつ無理を蓄積した結果、何かの弾みでそれが決壊し、うつ病になるのが一般的な気がする。そうなると、根本的な治癒は難しいし、治療に時間がかかるだろう。
今が辛くて死ぬほどやりきれないのなら、間違いなく医師に病状を訴え、診断書を貰って一時的にでも良いから、休職することをお勧めする。
休職から復帰したら(もしくは休職するほどでもなければ)長期戦での治療になるため、住んでいる市区町村の役所で自立支援医療(精神通院医療)の申請をお勧めする。

自立支援医療(精神通院医療)とはザックリ言うと、通常3割負担の医療費を(所得に応じて1ヶ月あたりの自己負担額の上限まで)1割に軽減する制度だ。
通常は病院(診療所含む)1カ所と調剤薬局1カ所(病院内の院内薬局がある場合は除く)を申請し、交付された自立支援医療受給者証自己負担上限額管理票を受診の際に医療機関に提出する。この受給者証の有効期限は1年で、医師の診断書を添付して継続更新が可能となっている。
この更新に必要な診断書の費用についても、市区町村によって全額補助金が出る場合があり、ぜひお住まいの市区町村の役所に確認してみていただきたい。役所の受付で「自立支援医療を申請したい」と述べれば、案内してくれる(たいがいは福祉課だと思うが)。

精神障害者手帳の申請も視野に考えよう

精神障害者手帳(正式名称:精神障害者保健福祉手帳)を持つメリットは色々とあるが、正直な感想として、直接的な経済的メリットは自立支援医療(精神通院医療)の方が上である。ネットでもメリットとデメリットについて説明しているサイトがあるので、詳細については「参照」にまとめておいた。
精神障害者手帳を持つことは、ある意味公的に障害者と認められたことになるので、それを受け入れるかどうか、自問自答してみて欲しい。
その上で、精神障害者手帳を持つメリットを簡単に列挙しておく。

  • 障害者雇用での就職・転職
  • 所得税・住民税・相続税・贈与税・自動車税の軽減
  • 公共料金の割引(NHK受信料・上下水道・公共施設入場料)
  • 交通料金の割引(JRを除く鉄道・バス・タクシー※市区町村による)
  • 携帯電話の割引(docomo ハーティ割引・au スマイルハート割引・softbank ハートフレンド割引
  • その他(保育園への優先的入園・公営住宅への優先的入居・映画館での割引等)

上記の中で特筆すべきは障害者雇用各種税金の軽減だろう。
特に障害者雇用に関しては、障害者雇用率制度があり、法定雇用率が2.0%から来月の4月1日より2.3%に引き上げられる(障害者雇用率2.3%に上げ 厚労省、20年度末までに日本経済新聞)。
しかも同時に障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わるのである(「2018年4月の精神障害者雇用義務化によって何が変わる?」参照)。
また、各種税金の軽減では、給与所得者にとって所得税と住民税の障害者控除・特別障害者控除・同居特別障害者控除は大きく、単純に所得税と住民税の障害者控除だけで年間50万円以上の控除となる。会社員なら年末調整で障害者控除を申請すると戻ってくるお金だが、会社にバレたくないのは人情である(「障害者控除を会社にバレずに使う方法。戻ってくる金額はかなり大きい」参照)。
最悪の場合だが、仕事をするのが厳しくて就業がままならず、収入が途絶えて人生が詰んだ場合、精神障害者手帳を持っていると生活保護も認められやすくなるようだ。

おわりに

1年の内で3月は自殺者が最も多い時期で、一般的に決算期で倒産や失業(契約・派遣の打ち切り含む)を迫られる人が、経済的問題に直面して出口を失って自殺を遂げてしまう、と言われている。
無論、年度末から新年度への過渡期でライフイベントが変化(卒業・就職・転職・異動・定年)するので、不安定な精神状態で大きな変化があると強いストレスになるからでもあるが、その根底にはうつ病の発症・激化があるだろうと思う。
うつ病は発症した本人しかこの苦しみは分からないもので、その絶望たるや言語を絶するものがある。こんなに苦しいなら死んでしまいたい、と思ってしまう。
しかし可能なら、どんなにブザマでもあなたには生きていて欲しいと願う。まずは、どんな手を使ってでも生きて欲しい。死ぬのは、いつでも、できる
うつ病を何とか克服した私は、以前から何かお役に立てないだろうか?と、ずっと考えていた。
自立支援医療(精神通院医療)にせよ精神障害者手帳にせよ、知っていると知らないとでは天と地ほどの差が出るし、それがもし生と死を分かつのであれば、積極的に知ってもらうしかない。
精神科医療は闇でしかないため、今後も記事化したいと思う。私は医療関係者でも専門家でもないのだが、患者として書けることはあるだろうと思うのだ。

参照

 


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