若者が大人と社会を責める前に読んで欲しい一文

私は商学部出身なので、1年次の必修科目として経済学(マクロ経済学)をどうしても履修し、単位を獲得しなければ卒業が出来ない運命であった。
・・・別に大学1~2年次に設定されている、いわゆる一般教養科目であるから、必修とは言えそんなに難しい内容ではない。
逆に言えば、1~2年次の一般教養の科目にさえ付いて来れない学生は致命的で、3~4年次での専門科目やゼミでは落第するしかない。そうは言っても文系学部だから、その辺は割と緩かった記憶がある。
なんで私が今更こんなことを書こうと思ったのか、それはマクロ経済学を成立させた、ジョン・メイナード・ケインズの名言を引きたかったに過ぎない。

経済学者や政治哲学者の思想は、それが正しい場合にも間違っている場合にも、一般に考えられているよりもはるかに強力である。事実、世界を支配するものはそれ以外にはないのである。どのような知的影響とも無縁であるとみずから信じている実際家たちも、過去のある経済学者の奴隷であるのが普通である。権力の座にあって天声を聞くと称する狂人たちも、数年前のある三文学者から彼らの気違いじみた考えを引き出しているのである。私は、既得権益の力は思想の漸次的な浸透に比べて著しく誇張されていると思う。もちろん、思想の浸透はただちにではなく、ある時間をおいた後に行われるものである。なぜなら、経済哲学および政治哲学の分野では、25歳ないし30歳以後になって新しい理論の影響を受ける人は多くなく、したがって官僚や政治家やさらには煽動家でさえも、現在の事態に適用する思想はおそらく最新のものではないからである。遅かれ早かれ、良かれ悪しかれ危険なものは、既得権益ではなくて思想である。

出典:J・M・ケインズ塩野谷祐一訳)『雇用・利子および貨幣の一般理論

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正確を期すために引用がやや長いから、「( ゚Д゚)ハァ?」と思うかも知れない。
よって、分りやすく太字で強調しておいたが、要するに、若い頃(引用文では25歳~30歳まで)に覚えて体に染み込んだ思想(分りやすく言えば、それを「仕事のやり方」と置き換えても良いだろう)から脱せないやね、ということだ。
私が糊口をしのいでいるIT業界では、MS-DOSの時代からWindowsの時代になり、それがWebの時代になって、かなりの大異変があった。
MS-DOSを含む、従来の汎用機系(オフコン含む)SE達は、Windows95時代に設計もプログラミングも出来なかった。だからそれをキャッチアップした人(私を含む)は大いに活躍したが、次にWeb系システムやクラウドにトレンドが移行すると、それをキャッチアップ出来ないSE・プログラマは職を失う(転職する)か、企業の中間管理職にしがみつくしかなかった。
そして今度はAIの時代であり、様々なAIを応用したシステムや企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が課題となっている。それらも視野にSEは常に研鑽しなければならない。
給料も社会的地位も低いのにな(´・ω・`)

私は別に、IT業界を嘆きたいのではない。
つまり、若い頃に習い覚えた学問や仕事は、ケインズが指摘しているように思想として固定化されるから、それを覆すのは無理ゲーだと言っているのだ。
その前提に立てば、会社のクソ上司のバカさ加減も、日本政府や政治家のバカさ加減も「ああ、そういうことか」と納得されるのではなかろうか。
だから「しゃーない」とは、口が裂けても言わないが

私はIT業界でSEを張るには老人と言って良い年齢だろうし、実際に目がダメになったり、集中力が散漫になっており、若いバリバリの人に比してどうしたって負けを認めざるを得ない。
いくら努力して業界のトレンドや政治・経済の新しい理論(例:MMT等)を勉強したって、そりゃ若い人には敵わないだろう。でも、知識と経験があるから応援は出来る。
とは言え、引用したケインズの言葉通り、日本の官僚と政治家は30年前の新自由主義政策を次々と実行し、その誤りを知らないのか、知ってても無視しているのか、ムチャクチャをやっている
それを指摘しないのも、あまりに不自然ではないだろうか。
と言うのも、別に私だけがケインズやそのマクロ経済学を知っているワケでは当然ないし、ケインズの著名なこの言葉とて、誰も引用しなかったワケではあるまい。
知っててもサイレントマジョリティに徹しているのか、思考停止で止まっているのか。恐らく(いわゆる)「ネトウヨ」と称される人達は一方的に政治は語るが、経済は知らないのではないか。
ともあれ、若い人は(特に未成年者なら)大人と社会を責める傾向にある。私もかつてそうだった。だからこそ分かるし、自分が今やその大人であるから、このケインズの引用を読んでみて欲しいと思うのだ。
我々大人が「無罪」だとは言わない。だが、少しは理解してくれ。そしてこんな大人にはなるな。

そんな一日だった。(´ー`)y-~~oO

 

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